洗車に欠かせない道具のひとつにマイクロファイバークロスがあります。
マイクロファイバークロスは、もはやこれまでの綿100%のタイルより吸水性が高く、しかも乾きやすいことなどからクルマの洗車だけでなく、家庭用の掃除道具として広く用いられています。
私も以前から洗車時の水滴のふき取りにはマイクロファイバークロスを使ってきましたが、マイクロファイバークロスも進化しており、著しく吸水性が高いものが出てきているのです。
そこで洗車時の水滴拭き取りに使うと限定した場合、どのようなマイクロファイバークロスが吸水性が高いのかを実際に試してみましたのでご紹介しましょう。
取り切れない水滴もあった従来のクロス
従来のマイクロファイバークロスは吸水性が高いとは言われていたものの、洗車後の拭き取りの際、拭いても水滴が残っていることがありました。
もちろん拭き取れている個所もあるのですが、水滴を薄く伸ばしたり、単に移動させただけのように感じた個所があったのも事実です。
そのため、同じ個所を何度も拭き取らねばならないケースもありました。
新しいタイプのマイクロファイバークロス
現在マイクロファイバークロスは色々なタイプのものが販売されているようです。
それぞれが色々な言葉で吸水性が高いことを説明しているようですが、そもそも綿タオルなどと比較して吸水性が高いのか、それとも従来のマイクロファイバークロスと比較して吸水性が高いのかよく分かりません。
つまり吸水性が高いというのが、何を基準にしたものかが分からないのです。
しかし高い吸水性を売り文句にしているマイクロファイバークロスの中でも、明らかに従来のものとは異なる構造のものが何種類かありました。
新しいタイプのものを実際に購入して検証してみました。
生地の織り方そのものが違うもの「SO-UP P-48」
クロス生地の織り方そのものが従来のものとは異なり、リブ織り加工に加えてマルチレイヤー、つまり生地そのものが何層にも重なる構造と説明されているマイクロファイバークロスです。
手にしてみると、クロスそのものに厚みがあることが分かります。
毛足の長いもの「ProStaff P-119」
従来のマイクロファイバークロスよりも毛足が長く、それによって吸水性が高いとアピールしているもの。
ただし毛足が長いのはクロスの片面だけで、もう片面は短めの毛足になっているようです。
厚手のもの「ワコー CC-46」
従来のものに比べて生地自体に厚みがあるため、吸水性が高いと説明されているものです。
毛足の長さは、両面ともに従来のものよりも長く作られているようです。
手に取ってみるとフワフワした感じの柔らかさがあります。
それぞれのマイクロファイバークロスの能力を検証
上記の3タイプのものが、従来のマイクロファイバークロスと比べて本当に高い吸水力があるのかは検証してみなければ分かりません。
そこでそれぞれのクロスはどのぐらいの水を吸い取ることができるのか、そして実際に使ってみた感触はどうなのかを検証してみることにしました。
どのぐらいの水を吸い取ることができるのかは、各クロスに水をかけ、滴り落ちない状態の時の重量を計測し、乾燥している時との重量差で判断します。
また各マイクロファイバークロスはそれぞれサイズが違うため、吸水した重量を同じ面積に計算し直して比較します。
なお比較対象とする従来の一般的なマイクロファイバークロスとして、バリアスコートに付属していたものを用いました。
このクロスはカー用品店やホームセンターなどで売られているものとほとんど変わらないようなので、比較対象としました。
もちろんこの検証だけで吸水力の全てを判断することができないでしょう。
実際には水を吸い込む早さや、クロスにあるマチの大きさなども関係してくるはずですが、マイクロファイバークロス選びの参考にはなるはずです。
タイプ別マイクロファイバークロスの吸水量を計測
まずそれぞれのマイクロファイバークロスが濡れていない時の重量を計測します。
計測は全て薄手の袋(1g以下)に入れておこないました。
吸水時の重量計測は水道でたっぷりと水を含ませた後、水が垂れない程度まで柔らかく握り、極力水をたっぷり含んだ状態で再度同じ袋に入れて計測しました。
各マイクロファイバークロスの計測データは以下のようになりました。
バリアスコートに付属していたもの
サイズ:52㎝×32㎝
面積:1664㎠
乾燥時の重量:52g
吸水時の重量:316g
吸水重量:264g
1000㎠あたりの吸水量換算:158.6g
生地の織り方そのものが違うもの「SO-UP P-48」
サイズ:22㎝×32㎝
面積:704㎠
乾燥時の重量:79g
吸水時の重量:407g
吸水重量:328g
1000㎠あたりの吸水量換算:465.9g
片面だけ毛足の長いもの「ProStaff P-119」
サイズ:65㎝×24㎝
面積:1560㎠
乾燥時の重量:61g
吸水時の重量:489g
吸水重量:428g
1000㎠あたりの吸水量換算:313.4g
クロスに厚みがあるもの「ワコー CC-46」
サイズ:40㎝×40㎝
面積:1600㎠
乾燥時の重量:100g
吸水時の重量:698g
吸水重量:598g
1000㎠あたりの吸水量換算:436.2g
吸水量計測結果
4つのタイプのマイクロファイバークロスについて、乾燥時の重量と吸水させた時の重量、そしてこれらから1000㎠あたりの吸水量を計算したところ、以下のような順位になりました。
「吸水量が高いと考えられるもの順位」
- 1位:生地の織り方そのものが違うもの「SO-UP P-48」(465.9g)
- 2位:クロスに厚みがあるもの「ワコー CC-46」(436.2g)
- 3位:片面だけ毛足の長いもの「ProStaff P-119」(313.4g)
- 4位:バリアスコートに付属していたもの(158.6g)
ただしこの検証では、吸水時の重量を計測する際の「水が垂れない状態」がどうしても感覚的なものになってしまうため、全く同じ条件で重量計測できているかはあいまいになってしまうことはご理解ください。
吸水速度や水の広がり方に違い
吸水量を計測するために水で濡らしていた際、バリアスコート付属品だけが水を含ませるのに時間がかかり、それ以外の吸水速度はほぼ互角といった感じでした。
「吸水速度が早いと感じた順位」
- 同着:生地の織り方そのものが違うもの「SO-UP P-48」
- 同着:片面だけ毛足の長いもの「ProStaff P-119」
- 同着:クロスに厚みがあるもの「ワコー CC-46」
- 4位:バリアスコートに付属していたもの
ただし同着でも、 水の吸い方には違いがありました。
生地の織り方そのものが違うもの「SO-UP P-48」は表面に広がるのではなく、すぐに内部に浸透していくような印象を受けました。
一方、クロスに厚みがあるもの「ワコーCC-46」と片面だけ毛足の長いもの「ProStaff P-119」は水で濡らした時、濡れた部分が表面に拡がっていく感じがありました。
実際に洗車して水滴を拭き取ってみる
上記の結果はあくまでもどれほど早く、どれほど多くの水を吸い取ることができるのかを調べただけのものです。
実際に洗車して水滴を拭き取ってみなければ分からないこともあるはずです。
そこで実際の洗車にこれらを使い、その使い心地や気になった点などを説明しましょう。
バリアスコートに付属していたもの
このクロスは単に濡らすだけでなく、バケツの中で揉み洗いするようにしてから絞って使いました。
クロスそのものは柔らかくて使いやすいのですが、どうしても拭き残しが筋のように残ったり、水滴を移動させただけに終わっていた個所もありました。
バリアスコートを塗布していた時には気にならなかったのですが、このクロスは水滴を拭き取るというよりも、ボディに何かを塗布する時などに有効なのかもしれません。
生地の織り方そのものが違うもの「SO-UP P-48」
このクロスはほとんどといっていいほど拭き残しがなく、細かな水の筋が付いてしまうこともありませんでした。
軽く撫でる程度で十分水滴を吸い取ってくれます。
これは吸水量を計測した際に感じた水分をクロス表面ではなく、内部に取り込む効果によって、拭いた時にボディに逆戻りさせないせいだろうと想像しています。
検証が終わって乾かした時、他と比べて最後まで中が湿っていた感じがあったのもこのせいなのかもしれません。
またクロスそのものに厚みがあり、ややコシがあるため、絞る時でも非常に絞りやすいと感じました。
その一方で、クロスの厚みによってボディの細かな部分や入り組んだ個所は拭きづらい印象があります。
しかし水滴の拭き取り加減と使い勝手は、今回テストしてみた中で1番でした。
ただしサイズが22㎝×32㎝と大きくないため、ルーフやボンネットの中央部分を拭くのは少々厄介です。
もう少し大きいサイズのものがあればより一層使いやすいのにと感じました。
片面だけ毛足の長いもの「ProStaff P-119」
バリアスコートに付属しているクロスと比較して、圧倒的にキレイに拭き取ってくれるので、楽にふき取り作業ができるものの、若干の水の筋が残ることもありました。
しかしクロスが柔らかいので、広い面だけでなく、細かな部分も拭き取りやすいことが印象的で、使いやすさを感じました。
オールマイティに使える実用性の高いクロスではないでしょうか。
クロスに厚みがあるもの「ワコー CC-46」
水滴の拭き取りは片面だけ毛足が長いものと同程度で、若干の水の筋も見受けられました。
クロスそのものは非常に柔らかいため、ボディへの攻撃性は低いだろうと感じます。
ただし、このクロスで気になるのが縁取り部分です。
非常に幅が広く、縁取り部分でボディを擦ってしまわないかを気にしながら拭き上げていました。
ルーフやボンネットなど平らな部分にクロスを広げ、クロスの端をつまんで拭き取るような動作であれば、縁取り部分も気にならないでしょう。
しかしドアパネルなどの縦の面はそのような拭き取り方は難しいので、注意しておく必要があるかもしれません。
また縁取りの部分は吸水性がないようなので、この幅をもっと狭く改良してくれればより使いやすくなると感じました。
2枚のマイクロファイバークロスで欠点を補う
マイクロファイバークロスを4種類比較してみましたが、一般的なクロス(バリアスコートに付属していたもの)と比較して、吸水性の高さを謳っているものはさすがといえる結果となりました。
しかし吸水性は高くても、実際に使ってみるとそれぞれ多少の一長一短があることも分かりました。
そこでマイクロファイバークロスの揃え方として最善なのは、1枚だけを使うのではなく、それぞれの欠点を補えるもの2点を選べばベストではないでしょうか。
例えば、圧倒的に拭き残しが少なかった「生地の織り方そのものが違うもの」と、「片面だけ毛足の長いもの」もしくは「クロスに厚みがあるもの」の2枚を使って拭き上げるなどの方法です。
こうすれば、ルーフやボンネットの中央部分だけでなく、細かな部分も拭き取れ、なおかつ残った細かな水の筋も素早く拭き取ることができるので、圧倒的に作業時間が短縮できるはずです。
洗車時の水滴拭き取り用マイクロファイバークロスを選ぶ際の参考になさってください。