先日、関東地方の首都圏を中心に降雪がありました。
4年ぶりの大雪で、都心部の交通網は大パニック状態。
電車は停まり、タクシーやバスには長蛇の列ができたそうです。
また幹線道路でも走れずに停まっているクルマを多く見かけました。
原因はタイヤチェーンなどを正しく装着できていない事のようでした。
普段、雪道を走ることがない人がどうしても走らなくてはならない場合、金属チェーンもしくは非金属チェーンを装着するのがほとんどでしょう。
このような場合に注意しておくこととはどのようなものなのでしょう。
数年に一度しか雪道を走らない人の雪対策とは
今回大雪が降った中でも東京都内に住んだり、働いている人のほとんどは雪道を運転した経験が非常に少ないでしょう。
もちろんスタッドレスタイヤを履くのがベストであることは理解しているはずです。
しかしスキーやスノボなど、ウィンタースポーツを趣味としている人以外は、スタッドレスタイヤは持っていないでしょう。
数年に一度のために高価なスタッドレスタイヤを購入する人はまれで、どうしても大雪の日にクルマを運転しなければいけない場合、金属チェーンや非金属チェーンを購入することがほとんどではないでしょうか。
そこで今回はタイヤチェーンの装着だけにスポットを当てて説明しようと思います。
タイヤチェーンはどのタイヤに巻くのか
今回の大雪では、前輪と後輪を間違えて装着していた人も多かったようですが、基本的にタイヤチェーンは駆動するタイヤに装着するのが正解です。
FF車なら前輪に、FR車なら後輪に装着します。
これを間違えてしまうと、クルマは前に進んでくれません。
また四輪駆動車の場合、一般的にベースとなる駆動輪が前なのか後なのかによって装着するタイヤが変わってきます。
FFベースの四輪駆動車なら前輪で、FRベースの四輪駆動車なら後輪ですが、前後輪の制御方式などによりタイヤの外形サイズが変わるとコントロールできなくなる場合や故障の原因になることもあるため、事前にメーカーなどに問い合わせておく必要があります。
近年のタイヤチェーンは装着が容易
昔の金属チェーンは、装着するためにチェーンを地面に伸ばしておいて、そこにクルマを動かして乗せる、もしくはジャッキアップして装着するなどの手間が必要でした。
これは構造上そうするしかなかったためです。
最近のタイヤチェーンは非金属チェーンはもちろん、金属チェーンでも装着は非常に楽になっています。
クルマを移動させたり、ジャッキアップしなくても装着することが容易になっているのです。
チェーンを装着する際、いつもジャッキアップしていた私はびっくりです。
タイヤチェーン装着の練習をしておくべき
タイヤチェーンを購入して、そのままパッケージを開封もしないでいると、いざ雪が降ってきて、チェーンを装着しなければならない時に焦ってしまいます。
取説を片手に取り付けるなんてことになると、装着に時間が掛かるだけでなく、正しく装着できていない場合がほとんどです。
考えてみてください。
ほとんどの場合、雪が降って路面がグチャグチャになり始めた状態でチェーンを装着するのです。
気持ちは焦っているでしょうし、余裕もありません。
グチャグチャの路面で、日頃やらないような姿勢をとらねばならないだけでなく、汚れたタイヤの裏側や接地面に手を回す必要があるのです。
衣服はもうドロドロになってしまいます。
指先はかじかんでしまい、上手く動かなくなります。
こんな状況で、しかも初めてのチェーン装着なら、正しく装着できる方が奇跡かもしれません。
このようなことがないよう、チェーンを購入したら、必ず事前に装着の練習をしておくべきです。
これはつまり、雪が降った時でも車を運転する可能性が高い場合は、事前にタイヤチェーンを購入しておく必要があるということです。
事前に練習しておくことのメリット
事前に何度か練習しておけば、いざ装着が必要になっても、手順やコツが分かっていますから、落ち着いて正しく装着することができます。
またどんなものが装着に際し必要なのかも分かってきます。
装着する際、膝や手を地面につけなければ装着できないのであれば、毛布やビニールシートなど、路面に敷くものがあれば衣服が汚れないことが分かるでしょう。
タイヤチェーンは装着が容易になったとは言え、構造上どうしてもタイヤの裏側にワイヤーやハーネスを通さねばならず、それにはタイヤの裏側に手を回さなければなりません。
どうしても手が汚れるだけでなく、金属の突起部分で手を傷付けることもあります。
軍手やゴム手袋、汚れても構わない上着などが必要になることも理解できるはずです。
雪が降る日というのは、寒い日ということです。
そんな日に屋外でチェーンを装着していると、薄着では寒くて風邪をひいてしまうということも分かるでしょう。
防寒対策も考慮しなければならないことが分かるはずです。
チェーンを装着しなければならないタイミングは昼間だけとは限りません。
夜に装着しなくてはいけないケースもあるはずです。
また装着する場所にライトが灯っているとは限りませんし、仮に街灯などが灯っていても車の下回りは見えません。
作業用のヘッドライトが必要になることが分かるでしょう。
金属チェーンでチェーンの余り部分ができるタイプのものであれば、余った部分をそのままにして走るとタイヤハウスやアルミホイールに傷が付くことも分かります。
余りのチェーンを縛るための針金が必要であることが理解できるでしょう。
ジャッキアップすれば手が入りやすく、作業もしやすい
何度練習してみても装着が難しいタイプのタイヤチェーンもあるでしょう。
その場合には、ジャッキアップすれば驚くほど簡単に、正しく装着できます。
タイヤチェーンのタイプには色々なものがあり、装着方法も異なりますが、どのようなチェーンでも基本的に作業する時には地面に膝をつかなければ作業できなかったり、タイヤの裏側の奥にまで手を入れなければいけない場合がほとんどです。
またFF車は前輪にチェーンを装着するため、ハンドルを大きく切れば手が入りやすくなりますが、FR車の場合は後輪にチェーンを装着しますので、タイヤの向きを変えることはできません。
FR車はどうしても作業性が悪くなってしまいます。
このような場合、ジャッキアップしてしまえば手を入れやすくなり、チェーンを正しく装着しやすくなります。
しかも地面に膝をつく必要がなくなったり、タイヤの裏側を覗き込むのも非常に楽になります。
もちろんジャッキを取り出し、ジャッキアップするなどの手間で、どうしても時間は余計にかかります。
しかし正しくチェーンが装着されていなかったため、何度も装着し直したり、ボディやアルミホイールに傷を付けてしまう、万が一の事故などを考えれば、この程度の手間は気にすることはないように思います。
慣れてしまえば、ジャッキアップは一箇所あたり2~3分でできてしまいますので、チェーン装着に慣れていないのであれば、ジャッキアップして確実に装着することをおススメします。
チェーン装着で気を付けること
・安全な場所で装着する
チェーンを装着する際に気を付けなければいけないことは、他のクルマの邪魔にならないところを選ぶことです。
他のクルマの通行を妨げると、渋滞が発生することになってしまいます。
もちろん、他のクルマが走るすぐ側での作業は、作業する人にとっても危険です。
高速道路などではチェーン装着場やパーキングエリアがありますので、必ずそのような場所で装着するようにしましょう。
また一般道であっても、必ず広い空き地や駐車場などで装着するようにしましょう。
・早めに装着する
早めにチェーンを装着すれば、余裕を持って装着場所を選ぶことができます。
慌てることもなくなりますので、早め早めの装着を心掛けましょう。
・装着は平らな場所で
装着はできるだけ平らな場所が装着しやすいだけでなく、万が一凍結などしていた場合、滑り落ちてくる危険性があります。
またジャッキアップして作業する場合には平らな場所でなければ、ジャッキが外れて非常に危険です。
チェーン装着は平らな場所で行うようにしましょう。
・少し走ってから緩みをチェック
自分ではしっかり装着できていると思っていても、タイヤにチェーンが引っかかるなどして、上手く装着できていない場合もあります。
装着して少し走ってから、チェーンにたるみや緩みができていないかを必ずチェックするようにしましょう。
チェーン装着に際して用意しておくべきモノ
万が一チェーンを装着する際、必要なものをまとめてみましょう。
・ビニールシートもしくは毛布、そして新聞紙
路面の雪がまだ少なく溶けている状態、つまり雨が降ったのと同じ状態ならビニールシートを敷いて作業すれば衣服が汚れることはありません。
もし既に雪がある状態なら、ビニールシートでは滑ってしまうため、新聞紙などを敷いた上にビニールシートを被せれば滑らなくなります。
またビニールシートの代わりに毛布などがあれば完璧です。
毛布は雪の量が多く、スタックした際などに路面に敷くことでスタックから抜け出すことができます。
・軍手もしくはゴム手袋
作業性を上げ、手を汚さず、防護するために使用。
台所用のゴム手袋なら指先も滑らず、上着の袖が汚れるのもカバーできます。
・上着
作業に際して汚れることがあれば、必要になります。
薄い防寒着を兼ねていればベストです。
・アウトドア用ヘッドライト
手持ちの懐中電灯などでは作業性が悪く、誰かに照らしてもらわないと目視したい箇所を明るくすることができません。
アウトドア用のヘッドライトがあれば、作業効率が上がります。
・長靴
雪道で作業するのに普段の革靴やスニーカーを履いていると、ドロドロに汚れてしまうだけでなく、中が湿ってきます。
長靴があればこのようなことを防ぎながら作業することができます。
・針金、ペンチなど
余ったチェーンを縛るために必要になってくるのが針金です。
また寒い中で作業していて、指先がかじかんでくると針金をねじることもできなくなるため、ペンチがあれば便利です。
・スコップやシャベル
雪の量が非常に多く、タイヤが埋まってしまうほどの場合には、チェーン装着時に雪をどかさなければ作業できません。
またスタックしてしまった際に雪を除去するためにも使えますので、準備しておくと万全といえます。
これらのモノはチェーン装着に際して必要ですので、雪の予報が出ている場合にはタイヤチェーンと共に積んでおくようにしましょう。
タイヤチェーンは万能ではない
温暖な地域や都内など、数年に一度しか雪が降らないからこそ、タイヤチェーンの装着に関して知っておくべきことをまとめました。
今年は例年より寒いようで、まだまだ雪が降ることがあるかもしれません。
是非事前に装着の予行練習をするとともに、必要な装備を整えておくようにして下さい。
今回は雪道での運転について触れていませんが、タイヤチェーンを装着しても雪道で普段と同じように運転をすると、間違いなくスリップし事故になってしまいます。
くれぐれも「急」の付く急加速や急ブレーキ、急ハンドルなどの操作はしないことが原則です。
また金属チェーンの場合は最高でも速度は30kmまで、非金属チェーンでも50kmまでに抑えないと走行中に破損する恐れがあります。
速度を十分に抑えて、事故のないよう注意して安全運転を心掛けてください。